滄の残像 ~愛しき君への約束


2021/01月〜
初出時の魔木子による挿絵を収録

STORY

 昭和17年夏。帝国海軍少尉・篠原鷹也は、蓼科の別荘地に向かっていた。ミッドウェー海戦後の一時帰休の間を、上司であり恩人でもある海軍少将・穂積斉昭伯爵の別邸で過ごすためだ。
 穂積家の別邸には、少将の次男で16歳になる翔(かける)が転地療養を兼ねた疎開をしているという。、
 穂積家には鷹也の祖母・多恵が女中頭として長年仕えている。その縁で穂積伯爵家に書生として引きとられた鷹也は、翔とは主従の枠を超えて兄弟のようにして育った。 翔は鷹也を慕い、鷹也も翔を愛しく思っていた。
 ところが6年前、鷹也は周りの制止を振り切って予科練に志願し、穂積家を出た。翔に対して湧き上がった禁断の情念に嘖まれた彼は、冷静になるために翔と距離を置く道を選んだのだ。
 そうして、厳しい海軍飛行科での日々が鷹也の心身を磨き、今や彼は海軍飛行科屈指の戦闘機乗りとして知られる、優秀な青年将校となっていた。
 そんな彼に穂積家への帰還を決意させたのは、翔の父の言葉だった。戦況が思わしくない上に、翔の病状も徐々に悪化している。
少将は心ならずも離別した若い二人を再会させようと、帰休の場を提供してくれたのだ。
 翔は鷹也を待っていた。鷹也が惹かれたのと同じように、翔もまた鷹也に恋をしていた。
 再会し、互いの心を通い合わせる二人。6年の歳月を経てようやく成就した恋。
 しかし、敗戦の気配と翔の兄・昭継に二人の関係を知られたことで、状況は急変する────。

※Kindle配信用に加筆修正した完全版

概要

【著者】鷲尾滋瑠
【作品初出】1993年8月:青磁ビブロス刊小説b-Boy2号
挿絵:魔木子
【単行本】1997年3月:茜新社刊:オヴィスノベルズ
挿絵:竹田やよい
【電子書籍版元】茜新社
【レーベル】オヴィスノベルズ